モーツァルト クラリネット協奏曲イ長調KV622
( ベーレンライター新モーツァルト全集版)
W.A.Mozart Concerto in A major for Clarinet KV.622
クラリネット協奏曲イ長調K.622は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって、1791年に作曲された最後の協奏曲である。2006年英国クラシックFMのモーツァルトの人気曲第1位になったことからもわかるように、彼の全作品中最高傑作との評価もある。
第1楽章 アレグロ
PLAY <第2楽章>
第2楽章 アダージョ
第3楽章 アレグロ
シュタードラー 体調は大丈夫かい?モーツァルト君。
モーツァルト おお、天才クラリネット奏者のシュタードラー君、なんとかね。「魔笛」はもうすぐ完成しそうなんだけど、急に入った「皇帝ティートの慈悲」の作曲依頼が来て、その上「死者のためのミサ曲(レクイエム)」の依頼も受けたので3つ同時に進めているんだ。貧乏暇なし。体の調子が悪いなんて言っていられないよ。
シュタードラー 無理しては駄目だよ。「皇帝ティートの慈悲」はどんな曲にするんだい?
モーツァルト 君のバセットクラリネットが大活躍するように書いているから、良くさらっておけよな。
シュタードラー OK、楽しみにしているよ!そういえば、あの曲どうなった?
モーツァルト 君の為のクラリネット協奏曲のことかい?あれはかなり前にG 管バセットクラリネットの為に第1楽章の途中まで書いたっけ。すっかり放置したままだな。
シュタードラー せっかくだから完成してくれよ。君の為に最高の演奏をするよ。ただ、世の中のクラリネット奏者は僕が改良したG 管のバセットクラリネットなんて持っていないから、A 管用にしたほうが売れるぞ。
モーツァルト そうだな。構想としては第1楽章はAllegro でソナタ形式。クラリネットの音色を例えると秋の紅葉のような鮮やかさとはかなさをあわせ持っているところを表現したい。第2楽章はAdagio で3部形式。天の神様の啓示を感じている雰囲気を作りたい。第3楽章はAllegro でロンド形式。これはシュタードラー君、君との友情を表わしたい。全体的に今まで作曲した協奏曲とは違って、室内楽のようにオーケストラとクラリネットが対話ができる曲にしよう。
・・・数ヵ月後・・・
シュタードラー モーツァルト君、プラハ公演で「ティート」が異常な喝采を受けて最後の幕を下ろしたよ。僕はオペラ歌手でもないのに観衆から絶大な喝采を受けることができたよ。
モーツァルト シュタードラー君、君はまさにボヘミアの奇蹟だ。そうそう、君の為の協奏曲を書き終えたよ。約10 日間ですべての仕事が終わったよ。最後のロンド楽章なんてビリヤードで遊んだ後に、ブラックコーヒーを飲み、パイプで煙草をくゆらせていたらどんどんインスピレーションが沸いて、あっという間にという間に完成しちゃったよ。
シュタードラー 相変わらず仕事が早いな。どれどれ早速吹いてみるぞ。おお、なんて素晴らしい曲なんだ。これは後世に伝わる傑作だ!
完成した2ヵ月後にモーツァルトはこの世を去ってしまった。この曲が傑作と言われるゆえんは、モーツァルトが天才クラリネット奏者であるアントン・シュタードラーに出会ったこと。そして、クラリネットの音色が、あたかも紅葉が散ってしまう前のはかなさと鮮やかさを感じさせるので、モーツァルト自身の晩年のインスピレーションがシンクロした結果ではないかと勘繰ってしまうのだ。
本日は、クラリネット界の中でも最高峰の美しい音色を紡ぐ谷尻忍さんとTAO のメンバーが楽器を通じて、あたかもモーツァルトとシュタードラーの対話のような演奏ができたらといいなぁと思っております。是非お楽しみに!
(cl. 室住淳一)
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